時代物イラストレーション・藤沢周平「初つばめ」から

町を横切って堀ばたに出たところで、目の前をすいと掠めすぎたものがあった。そのものはあっという間に白く濁ったいろをしている春の空に駆け上がり、日差しをうけてきらりと腹を返すと、今度は矢のように水面に降りて来た。

―おや、つばめだよ。

となみは思った。立ち止まって、水面すれすれに下流の八幡橋の方に姿を消すつばめを見送った。今年はじめて見るつばめだった。

                          ―藤沢周平「初つばめ」から抜粋

春の旅
春の旅
櫛

 

MJイラストレーションズの課題「春」、3点描きました。

 

「初つばめ」大好きな藤沢周平の短編から。彼の小説を読むといつも風景が浮かびます。端正で無駄のない流麗な文章は何度も読み返してしまいます。

ちなみに、本文からの抜粋の中の「八幡橋」は私の住んでいる家のそばにあります。

 

「春の旅」春なので菜の花を描こうと思ったのですが、その時に浮かんだのが旅です。気持ちの良い季節は二人で旅に出たいなぁ。菜の花がちょっと稚拙、描き直したい感じです。

 

「櫛」桜の下、花びらが少し散る中で男から手渡された桜模様の櫛、アップで描いてみました。